漢方薬が得意とする病気

漢方が単独で使用可能な場合がある。風邪の初期の場合、脈が触れやすく汗をかいていないもので体力があれば葛根湯を、汗が出ていれば桂枝湯を、脈が触れにくく寒がりで余り元気が無い方が風邪を引いた場合は麻黄附子細辛湯を用いて比較的短期間での治療が期待できる。また、明け方のこむら返りには芍薬甘草湯は大変有効である。そのように短時間で臨床効果が現れる場合もある。その他、花粉症に対する小青竜湯、膝の痛みに対する防已黄耆湯、頭痛吐き気に対する五苓散など、即効性を期待される漢方がある一方、体質のゆがみの改善を目的とする漢方治療がある。

漢方治療が行われている体質としては、アレルギー体質(花粉症・アトピー性皮膚炎・喘息・じんましん)、冷え(月経困難症・月経不順・冷え症・不妊症・頭痛・肩こり)、虚弱・疲労(小児虚弱体質・慢性疲労症候群)、老化(認知症の周辺症状・夜間頻尿・腰痛・気分障害)などがある。

その他、副作用等で西洋医学治療が困難な病態(胃潰瘍のある患者の頭痛など)、ストレス因子の強い病態などでも漢方は比較的使用しやすい。

漢方が苦手な病態

西洋医学的に治療法が確立している病態に対しては基本的に西洋医学的治療を優先した方がよいと思われる。例えば、急性心筋梗塞・脳血管障害の急性期・ショック状態などの一刻を争う緊急処置が必要な病態や治癒切除可能な悪性疾患、治療法が確立している代謝性疾患に対して、西洋医学的治療法を行わずに漢方治療のみ行うことは治癒にいたる機会を奪うことになりかねない。西洋医学的な病態の把握が不十分な患者では、悪性疾患などの重大疾患をきちんと除外することが必要である。日本東洋医学会の漢方専門医は、漢方の知識技能の習得だけでなく、内科・外科等の西洋医学に関する専門医認定医も取得を義務づけられている。より有効により安全に漢方薬が用いられるためには、西洋医学と漢方医学の知識の両方が必要と思われる。