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漢方の疑問点「Q&A」

1 漢方薬の使い方について(随証治療 病名治療 漢方医学的診断 歴史的背景)

  • 長い歴史の中で主に中国大陸で集積された、天然の動植物、鉱物などを薬物として利用する人類の知恵が、今日に伝わって漢方薬(方剤)として活用されています。

    現代医学の医師免許で漢方薬を処方できる我が国では、現代医学的な診断(病名)に基づいて現代医学の薬と同じ感覚で漢方薬を用いる病名治療が広く普及していますが、漢方薬による治療を単なる対症療法に終わらせず、真に患者さんを健康に導くために本当に適切な漢方薬を選択するには、漢方医学的な病態病型診断に基づいた処方決定が必要になります。

    我が国での漢方医学的な漢方薬の運用方には、大陸から伝来後日本独自の発展を遂げ、経験知を重視して漢方薬と患者の病型を直接対応させる「方証相対」による随証治療という方法から、陰陽五行説など独自の病態理論に基づく弁証論治により漢方薬を組み立てる方法まで幅広い考え方がありますが、実際の臨床では重複することも少なくありません。

証とは独特の病態観により、その時点での患者の心身全体の状態を示す漢方医学的診断です。

随証治療の考え方では、ある漢方薬の適応となる病態、状態のことであり、証が決まれば適応となる漢方薬が決まることになります。

現代医学的に言えば、その漢方薬により改善を示すことが経験知として確立された、ある種の症候群となります。

超複雑系であるヒトの、ある時点での状態を科学的に理解することはまだ出来ないため、漢方医学的なパラメーターを用いて診断を進めることになります。

陰陽とは漢方医学的なパラメーターの中でも基本となる概念で、患者の闘病反応の質を総体的に表す独特な病態観です。

一般に熱性、活動性の病態を陽証、寒性、非活動性の病態を陰証としますが、あくまで二元論による相対的なものです。

漢方医学では陰陽に大きな偏りのない状態が健康であり、治療の目標となります。

漢方薬を選択する際に、漢方医学的なパラメーター(陰陽、虚実、気血水など)や診断(証)を意識して、それぞれの漢方薬の特性を会得していくと良いでしょう。

最初からあれこれ手を出すよりも、少数の漢方薬をしっかり使い込んで、一つ一つの漢方薬への理解を深めることが遠回りなようで結局は早道です。

対症療法的な用い方でも、有用であるとの報告が集まりつつあります。

漢方治療エビデンスレポート

また漢方医学的な用い方で現代医学的な治療に並行して漢方治療を行い、患者の治癒反応を支援することが有効と思われる症例は日常的に経験されます。

今後の症例集積が期待されます。

2 漢方薬のエビデンスや作用メカニズムについて

  • それ自体が多数の成分を包含する生薬を複数組み合わせた漢方方剤が、超複雑系であるヒトの心身にどのように作用して薬効を発揮しているか?

    そのメカニズムの詳細な理解はまだ出来ていません。

    また病名で一律の治療を行うのではなく、個別の症例のその時々の状態(証)によって最適な漢方薬を選ぶ漢方医療は、現代医学的なエビデンス構築が比較的難しく立ち遅れてきましたが、漢方薬の認知が拡がるに伴い様々なエビデンスの報告が蓄積されてきております。

    日本東洋医学会HPにRCTを網羅的に収集して構造化抄録を作成したエビデンスレポートが日本語、英語で公開されています。

    漢方治療エビデンスレポート

    Evidence Reports of Kampo Treatment

    日本東洋医学会 EBM特別委員会

上記「漢方治療エビデンスレポート」に多数のエビデンスが集積されています。

術後腸閉塞予防に対する大建中湯や機能性胃腸症に対する六君子湯

認知症の周辺症状に対する抑肝散

抑肝散や芎帰調血飲

麻黄湯 のように、もっともエビデンスレベルが高いとされるメタアナリシスにより有効性が示されたものもあります。

非常に多数の成分からなる漢方薬ですが、その一部についての薬理作用、作用機序について作用機序について理解が進んできており、下記のようなことがわかってきています。

・五苓散の利水作用の機序の一つとして水チャンネルであるアクアポリン、特にAQP4の阻害作用が重要である。

・大建中湯の腸管血流増加作用・腸管蠕動亢進作用についてTRPA1,TRPV1などTRPチャネルを介している。

・六君子湯の消化管運動改善、食欲分泌作用についてグレリン作用増強が関与している。

・抑肝散の作用機序にグルタミン酸、セロトニン神経系を介した作用がある。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/tkm2.1226

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/tkm2.1006

3 漢方薬の保険診療について(保険適応見直しや生薬高騰と薬価低迷など)

  • 我が国では昭和42年から段階的に医療用漢方製剤が保険収載され、現在では医師の処方により148種類の医療用エキス製剤と、187(2021年)種類(成分)の生薬を健康保険で用いることができます。

    ただ漢方に対する理解の乏しかった当時から変わっていない保険上の適応病名が、本来の漢方薬の適応と齟齬が生じていることも少なからずあることは否定できません。

    また、世界的な生薬需要の高まりにより近年は生薬価格の高騰が著しい一方で、日本の漢方エキス製剤や生薬の薬価にはそれが反映されずむしろ下がり続けてきたため、保険診療での漢方薬の品質維持が徐々に困難になりつつあります。

    さらに、有用かつ安価な漢方薬が、これまで何度か健康保険適応除外の俎上に上がったこともあり、世界的に見ても恵まれ日常診療に必要不可欠なものになっている、我が国の健康保険適応の漢方診療の未来に危機感を覚えざるを得ません。

    日本の伝統医学である漢方医学を本来の形で世に拡め、日本国民の健康回復、維持、増進に貢献していくべく努力を続ける必要があると考えています。

新たな物質を開発して臨床応用する新薬開発と異なり、長い歴史の間に確立された有効で安全性の高い生薬の組み合わせである漢方薬の種類はどんどん増えていくものではありませんが、新規のエキス製剤の採用が滞っているのはたしかです。

学会としても取り組む課題ですが、現在採用されている漢方薬の用い方の工夫により、より多くの患者さんを救う新たな治験の集積も進んでいます。

医療用漢方製剤が誕生して半世紀が経過し、現在の技術水準をもってすればより少量だったり、飲みやすい剤型の作成も可能と思われますが、医薬品の承認には剤型追加でも多大な時間と費用が掛かることもあり実現していません。

飲みやすくするための工夫としてはオブラートや、漢方エキス内服のためのゼリー剤などの利用が可能です。

昭和60年に医療用漢方製剤の製造基準も設けられ『標準湯剤との比較試験に関する資料』の提出が義務付けられ品質管理と安全性が担保されています。

生薬の品質規格も厚生労働省からの通達に基づき厳密に管理されており、さらに各社、残留農薬、微生物、重金属量などの安全性に関わる品質管理や、生薬栽培、加工、輸送、保管を管理したトレイサビリティ体制を運用するなどしています。

詳細は各エキス製剤メーカー、生薬販売会社にお問い合わせください。

漢方薬の効果については、多くのガイドラインに採用されているように、広く認められていると思われます。

漢方薬が採用された診療ガイドラインに、エビデンスとなる引用論文の有無や推奨のグレーディングの有無で分類された、「漢方薬の記載を含む各種診療ガイドライン」の一覧が日本東洋医学会のHPで公開されています。

また、保険診療での漢方の薬剤費は一日薬価で数十円~最大でも数百円です。

漢方治療を行うことで入院期間や医療費を削減することができたり、薬剤費が減少した、予防効果や再手術の抑制効果など、漢方の費用対効果を認める報告はあります 。

多彩な愁訴に対応できることから、治療費のみならず無駄な検査費用の削減も可能など、漢方薬を正しく使うことで医療費が削減できる可能性は非常に高いと考えられます。

今後ビッグデータを用いたさらなる検証が待たれます。

4 漢方の投与(服用)用量調節、併用について

  • 漢方薬は現代の薬と異なり多種多様の成分の合剤であるためもあってか、純粋な化学物質であることが多い現代の薬のような直線的な用量反応関係には無いようです(linearなdose response curveは描かない)が、一般的に我が国における漢方薬の生薬含有量は中国のそれと比べるとかなり少なめです。

    短期間なら病気の状態や患者さんの体質に応じて増量して用いたり、逆に十分な効果が得られたあとは減量することもあります。

    ただ、複数の漢方薬を併用すると一部の生薬が重複することがあり、特に甘草、麻黄、大黄などは注意が必要です。

    また漢方薬の作用は、併用しても単純に相加作用となるとは限りません。

    最初のうちはできるだけシンプルな処方を心がけるべきでしょう。

    複数の漢方薬の不適切な同時服用は、むしろ効果を打ち消し合ってしまう可能性すらあります。

それぞれは少量の、多様な成分が複合的に作用する漢方薬では、現代の医薬品のように肝機能、腎機能の低下で機械的に減量する必要はまずありませんが、それぞれの成分の代謝にはまだわかっていないことも多く、通常よりも慎重に投与後の経過を追うことが望ましいでしょう。

体格による投与量の増減は通常成人ではあまり必要ではありませんが、前項のように病状の経過によっては投与量を調整することがあります。

エキス剤は用法としては水で内服するとなっていますが、もともとの漢方薬は殆どが生薬を煎じた湯液ですので、お湯に溶かして飲むほうが本来の投与法に近く、また顆粒のまま飲むよりもむしろ飲みやすいことが少なくありません。

エキス剤をそのまま内服する際も、多くの薬は冷水よりも白湯で飲むほうが望ましいでしょう。

先に白湯を口に含んでエキス顆粒を落として一緒に飲むのが一般的ですが、飲みにくい場合はオブラートや市販の漢方服用ゼリーの利用も推奨されます。

子供さんではアイスに混ぜたりはちみつなどで甘みをつけたり、チョコレートやココアなど苦味のあるものと一緒に服用してもらうと飲みやすくなります。

りんご味やピーナツバターと味の相性のいい漢方もあります。

明確な規定はありませんが目安の一つとして

・15歳未満7歳以上…成人用量2/3

・7歳未満4歳以上…成人用量1/2

・4歳未満2歳以上…成人用量1/3

・2歳未満    …成人用量1/4以下

とか、成人量を体重30~50kg当たりの投与量として体重換算する、という方法があります。

ただ、あまり厳密に運用するとエキス剤は再分包が必要になってしまいますし、実臨床ではそれほど厳格に調整しなくても良い印象です。

成人でもそうですが、急性疾患では短期的にこの2~3倍飲んでもらうこともあります。

漢方薬は一般にあまりのみやすい味ではありませんが、その時の体の状態によって同じ漢方でも味の感じ方が変わることはよく経験します。

体が求めているもの、合っているものは相対的に飲みやすく感じることはあるようで、これも処方選択の際に参考になります。

薬効と、生薬の重複による不都合、の2つの観点から注意が必要です。

また保険診療ではあまり多くの漢方薬の併用は査定の対象となることもあるようです。

薬効の面では、漢方薬はそれぞれ適応する漢方的な病態によって、陰陽虚実など薬理的な方向性、ベクトル、(方格)を持っています。

それを理解しないで闇雲に併用すると、薬効が打ち消し合ったり、目論見通りの効果を挙げられない可能性があります。

特に初診から複数の薬を併用してしまうと、効果がわかりにくく、処方の適切な修正も難しいので慎むべきでしょう。

複数の漢方の併用による生薬の重複も、甘草や麻黄、大黄、地黄などでは副作用の出現頻度が上がります。

併用する際には中身の生薬をよく理解して行いましょう。

漢方薬は名前が全く異なっていても実は中身がかなり近いことが少なからずあります(例えば小建中湯と桂枝湯など)。

医療用漢方製剤はその基となる生薬の組み合わせは古典に則っておりほぼ共通ですが、メーカーによって参考にした資料の違いのためか微妙に生薬の構成や量が異なることがあります。

また顆粒や粉末にするための賦形剤の違いで、飲み心地はだいぶ異なります。

一部のメーカーからは錠剤やカプセルの漢方薬も提供されています。

生薬の質や安全性については、現在我が国で提供されている医療用漢方製剤はどれも一定の基準を満たしており心配はありませんが、使われる生薬や製法の微妙な相違によりメーカーによって若干効果に違いがある可能性はあります。

5 漢方の効果判定や開始、終了のタイミングについて

  • 本来の漢方治療は、顕在化した不調や症状を取るのみならず、背景に存在する患者の心身の不調を整え、その人なりに最善の状態に変化させていくことが治療手段であり到達目標となります。

    本人がはっきり自覚していなくても実は不調を抱えており、治療によって改善して初めて治療前は不調だったことを自覚されることもあります。

    主な臨床症状や異常の推移はもちろん、それ以外の体調、心身の状態の変化をも注意深く観察しながら、治療の開始、調節を行っていくのが漢方治療の特徴です。

長く飲まないと効かないと思われていることが多い漢方薬ですが、風邪等の急性疾患では数時間以内の効果発現が期待されるなど、急性疾患と慢性疾患とでは判定の時期は大きく異なります。

発症数日以内の急性症状であればときには数時間、長くとも数日以内に効果の判定をするべきでしょう。

一方慢性に経過している病態での心身の状態を大きく変えるには時間がかかることも多いため、ある程度じっくりと経過を見る必要があります。

目安として処方開始後2~4週間程度で症状や全身状態、診察所見になんらかの改善の兆しがあるか?を判定の指標とすると良いでしょう。

上記のタイミングで効果判定を行い、改善の兆しが全く見られないときは処方変更を考慮します。

また診察所見や症状の変化などから、より良い処方があると考えられたときには、症状の改善があっても変更することもあります。

漢方薬にも有害事象はありえますので、内服中に明らかに不都合な症状が現れたり副作用が疑われた際には、一旦服薬を中止していただき、因果関係を確認してから治療再開を考慮したほうが安全です。

一方、治療によって症状や所見の改善が得られ、心身とも状態が良好となった際には投与終了を検討します。

目安として、状態が改善すると多くの患者さんがだんだん飲み忘れ始めるので、それでも良い状態が保たれているときには終了を考慮します。

ただ、ある程度の期間安定して状態良好でも、急激な中止は症状の再燃を見ることがあります。

投与回数を徐々に減らすなど漸減していく方が良いでしょう。

特に明確な基準はありませんが、自分なりに治療してみても思うような改善が得られない、行き詰まった、より良い処方選択があるかもしれないとき、など随時お気軽にご相談いただいていいと思います。

6 漢方の勉強法、教育法について

  • 大学の卒然教育に取り入れられるようにはなったものの、現代の科学体系とは一見大きく異なる漢方の習得は容易とは言えません。

    漢方薬の運用方法に、方証相対や弁証論治などかなり幅がある事にも初学者は混乱するかもしれません。

    まずは初歩的、基本的な分厚くない教科書を読み、実際に基本的な処方を使ってみることです。

    必ずしも初めから難しい理論書や古典を読む必要はありません。

    その後で、可能なら実際に漢方薬を自在に活用している専門家の診療を見学することは非常に助けになるでしょう。

    学会HPにある教育施設では見学を受け入れていることもあります。

    また様々なセミナーや講習会も行われています。

    学会発行参考図書一覧

    ・学生のための漢方医学テキスト、専門医のための漢方医学テキスト、現在新しい漢方入門用の書籍を作成中。

しっかりしたフローチャートや病名対応の処方選択は、漢方治療最初の一歩としては役に立つと思われます。

ただ、現代医学的な視点のみから漢方薬を用いるだけでは漢方本来の効果を発揮しづらく、漢方医学の醍醐味も味わえません。

その点を意識しながら徐々に知識や経験を深めていき、やがて漢方医学的なアプローチに基づいた治療を行えるようになことが望まれます。

現在、日本で行われている漢方治療には、日本で独自の発展を遂げた経験知を重視する漢方と、中国独特の病態理論を重視する中医学のどちらに重きを置くかで複数の方法論=流派があります。

日本漢方はEBMになれた現代の医師には比較的馴染みやすいかもしれません。

一方独特の理論にむしろ興味を持たれる場合には中医学的な方法論が面白いかもしれません。

どちらにしても漢方エキス製剤による治療が主流の現代ではどちらも同じ処方にいきつく場合もあります。

学習する上での注意点としては、最初のうちからいろいろと手を出しすぎると混乱するだけなので、ある程度理解が進むまでは一つのやり方をしっかり学ぶのが肝要です。

最近は大学教育に関して全国共通の指針作成が進んでおり、今後教育に関しては基本的な部分は統一されて行くと思われます。

7 漢方の副作用について

  • 漢方薬は多種多様な成分が少量ずつ複合的に作用するという特性から一般的に安全性は高いのですが、それでも強力な「薬」である以上、副作用は起こりえます。

    (『漢方薬による副作用(偽アルドステロン症、薬物性肝障害、薬物性肺炎)について~日本東洋医学会医療安全委員会活動報告(2019)~』日本東洋医学雑誌 71巻3号 p262?267)

    (『医療委員会報告~漢方製剤に関する薬局ヒヤリ・ハット事例』日本東洋医学雑誌 71巻4号p394~401)

    漢方薬の副作用としてはその薬理学的作用により用量依存性にある程度誰にでも起こるものと、アレルギーなど一部の患者さんのみで起こる特異反応によるものとに大別されます。

    いずれも比較的注意が必要な生薬がすでにわかっていますので、使用する漢方薬にそれらが入っているのかどうかはしっておくべきでしょう。

    漢方薬処方中、特に投与開始初期には慎重な経過観察と定期的な採血検査を行うべきなのは、漢方であっても通常の薬物治療と同様です。

    ただ、一般的に薬剤過敏反応の診断に使われるリンパ球幼若化試験(DLST)は、多種の薬理的活性物質からなる漢方薬では非特異的に陽性となるケースが多いことから、診断には役立ちません。

間質性肺炎のリスクのためインターフェロンとの併用が禁忌となるなど、小柴胡湯が有名ですがその他にも複数の漢方薬が要注意とされています。

医薬品等安全性情報 NO.146 より引用

これらに共通するのが生薬「黄芩(おうごん)」で、副作用としての間質性肺炎の発症との関与が強く疑われています。

この安全情報に載ってない漢方薬にも黄芩は含まれており、OTCで市販されている製品にも含まれているものが複数あります。

黄芩が含まれていない漢方薬でも間質性肺炎との関与の可能性があるとの報告もまれにはあります。

偽アルドステロン症は、高血圧、低カリウム血症、代謝性アルカローシスなどの原発性アルドステロン症様の症状・所見を示しますが、血漿アルドステロン濃度 (PAC) はむしろ低下しています。

甘草の含有成分であるグリチルリチンの代謝物が、腎尿細管細胞内でコルチゾールの不活化酵素である11βHSD2の活性を妨げ、ミネラルコルチコイドリセプターへの過剰刺激が起こることが原因です。

高用量、長期間の甘草の使用(一日量1gでの発生率は1%程度であるのに対し,6gになると11%になるとの報告があります;萬谷直樹, 他:日東洋医誌. 2015;66(3);197-202.)、ステロイド剤や非カリウム保持性利尿薬の併用、潜在性の原発性アルドステロン症の存在などがリスクとなります。

体格の小さな人、高齢、女性もリスクが高いという報告もあります(Mantani N,et al:J Altern Complement Med. 2020 Apr;26(4):329-334)。

現在、早期発見のためのマーカーの研究が進められています(Arch Toxicol. 2019 Nov;93(11):3111-3119)が、現時点ではまだ使用できないので、甘草含有漢方薬の使用中は定期的な電解質の検査や臨床症状の観察が必要です

現在までに明確に発癌性が指摘されている漢方薬はありません。

生薬、黄連・黄柏に関して,2017年の第39回日本中毒学会において発癌性,生殖毒性などの可能性について取り沙汰されましたが、動物実験やin vitroでの臨床用量とはかけ離れた実験結果を根拠に強引に副作用を論じており、妥当性は疑わしいと考えられます。

粗悪な生薬には発癌性を有する農薬の残留などが時折問題となりますが、我が国で用いられる医療用漢方製剤、医療用生薬はいずれも厳格な安全管理がなされており心配はいりません。

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