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5.考察

本調査結果から、漢方製剤に関連する記載を含むCPG自体が今回対象とした「日本国内発行のCPG」1158件中 104件 (9.0%) と少ないものであった。さらに、その中で、「引用論文が存在し、エビデンスと推奨のグレーディングがあり、その記載を含むもの」 (タイプA)、すなわち漢方製剤についてエビデンスに基づく推奨度があるような質の高い記載をもつCPGは少ないことが明らかとなった。

この理由として、以下の3つが考えられる。

1) 漢方製剤の質の高いエビデンスが少ない

日本東洋医学会 EBM委員会ER-TFによる「漢方治療エビデンスレポート Appendix 2015」 (EKAT Appendix 2015) によると、1986-2014年の間の漢方製剤のRCTは447件(543論文)、メタアナリシスは2件(2論文)であった。その中には、RCTという手法は用いているものの、試験デザインや統計学的手法、さらには報告の質などの面から、良質のRCTとは言えないものも含まれていた。日本では良質の漢方のエビデンスが蓄積されつつあるが、CPGにおいて強い推奨を得るような、質の高い漢方のエビデンスはまだ少ないのが現実である。まずは、漢方製剤の良質なエビデンスを「つくる」ことが求められる。

2) CPG作成者が漢方製剤のエビデンスを発見できていない

下記の論文で述べられているように、RCTの世界的なデータベースであるThe Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL) においては、漢方製剤に関するRCTは、"Medicine, Kampo" というMeSH (Medical Subject Headings) でヒットするものは少なく、"Drugs, Chinese Herbal"など、様々なMeSHで登録されているため、検索が容易ではなかった。

この状況に対し、日本東洋医学会EBM委員会による交渉の結果、2011年10月に、EKAT 2010までの漢方製剤のRCTが全て、CENTRALに収載され、そこから、日本東洋医学会の EKATの構造化抄録 (英語) にリンクが付与されたため、状況は、改善されつつある。

一方、医学中央雑誌刊行会の医中誌Web (http://www.jamas.or.jp/index.html) において、キーワード(統制語)として「漢方薬」がつけられているもの、または題名、抄録中に「漢方」という文字が含まれているものを検索した場合、中国の薬品や健康食品など漢方薬でないものがヒットしてくる。逆に、漢方製剤のRCTであるにもかかわらず、ヒットしないものがある。これらは、論文にキーワードを付与している者の漢方に対する理解不足の問題である。今後、漢方に関し正しい認識を広める必要がある。

また、Medlineなどで漢方製剤の英語論文を検索する場合、漢方処方名の表記が日本語のローマ字表記であったり、中国語発音表記であったり、また、音節にハイフォンを入れるかどうか等についてまちまちであることから、網羅的な論文検索が難しい状況にある。これは論文執筆者の側の問題である。日本においては「漢字処方名ローマ字表記法」(日本東洋医学会雑誌2005; 56: 609-22; http://www.jsom.or.jp/pdf/standard_kampo_list.pdf和漢医薬学雑誌2005; 22 綴じ込み別冊、Natural Medicines 2005: 59: 129-41)が作成されているが、近年でも、またこの表記法以外の表現が使用されている場合がある。新井一郎, 碇谷奈緒美, 山路誠一, ほか. 漢方論文における「漢方処方ローマ字表記法」 (2005) の処方名の採用状況. 日本薬科大学教育紀要 2017; 3: 42-7.

以上のような状況では、CPG作成者が一般的な方法で漢方製剤のエビデンスを探しても、十分に検索できていないことが推測される。論文発表年とCPG作成年との時間的な問題もあるが、「漢方治療エビデンスレポート Appendix 2015」 (EKAT Appendix 2015) に掲載されている1986-2014年の漢方製剤のRCT 543論文、メタアナリシス 2論文のうちCPGに引用されていたのはわずか38論文 (複数のCPGに同一の論文が引用されている場合でも1つと数えた) のみであり、本来それがCPGに取り込まれるべきなのに、取り込まれていない漢方薬のエビデンスが存在することも明らかになった。今後は、漢方薬の質の高いエビデンスが各CPGに「つかわ」れるべきであると考えている。

3) CPG作成者が漢方製剤を正しく認識できていない

CPGの中には、漢方製剤が処方名ではなく、「漢方」とひとくくりにされている場合や、このように漢方薬が正しく認識されていない状況下では、エビデンスに基づかない主観的なCPGにおいては、当初から漢方製剤が対象とされておらず、そのため記載されていないことも考えられた。今後は、エビデンスに基づいてCPGが作成され、その中で漢方製剤のエビデンスが評価されることが望まれる。

日本東洋医学会 EBM委員会 ER/CPG-TFでは、WHO/WPROによるCPG作成のプロジェクトは、組織的・方法論的問題があることを指摘したが、今回の調査過程で、国内のCPGにもエビデンスに基づかない漢方薬の記載が多数存在することが明らかとなった。CPGにおいては、漢方薬に限らず、すべての医療行為はエビデンスに基づいて記載されるべきであり、EBM委員会では、エビデンスを「つたえる」作業を、今後も、行っていく予定である。

なお、先にWHO/WPROのCPG作成projectを2007年に中断させたとのべた。ところが中国国内ではこのWHOのfundを用いた国内プロジェクトは進行していた。日本側は知らなかったものである。中国中医学科学院 (China Academy of Chinese Medical Science: CACMS) により2011年に「中医循証臨床実践指南」シリーズが3編、中国中医薬出版社から出版された。第1は「中医内科」で20 病種のCPG、第2は「専科専病」で8 病種のCPG、第3は「鍼灸」で5 病種のCPGを含む。それなりの水準のCPGである。急速に中国の伝統医学のレベルは向上したことが分かる。

詳しくは以下を参照。

  • 柳川俊之,津谷喜一郎. 中医薬の国際化と標準化に関する中国の政策 第5回 中医診療に関する業界標準と診療ガイドライン. 和漢薬 2013; 63 (720) : 3-10.

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