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6. 他のプロジェクトとの関連など (relation to other projects)

本プロジェクトと他のいくつかのプロジェクトとの関係は以下の通りである。

(1) スコー プ

比較試験におけるリサーチクエスチョンは介入とコントロールに規定される。漢方薬同士の比較、介入として複数の漢方薬群などを用いたもの、漢方医学のシステムそのものを評価しようというものが存在する。漢方製剤を用いたこの種の研究がさらに望まれる。

日本の漢方医学では、漢方製剤だけでなく煎薬として用いられている場合もある。これらを用いたRCTは期待されているところであるが、今回は除外リストにいれた。一定数がまとまったところで構造化抄録を作成したい。

また漢方処方によらない生薬治療などの伝統医療のRCTも、構造化抄録の作成とアクセスしやすい提供形態が望まれる。他の関連機関との協力なども将来の課題となろう。

伝統医療と限らなければ、日本では、Minds (http://minds.jcqhc.or.jp/) がコクラン・ライブラリーの構造化抄録のうち、Mindsのwebsiteに公開されている日本の診療ガイドラインに関係するものの日本語訳が作成され無料で公開されており、2013年度末までには The Cochrane Libraryの abstractそのものに、英語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、クロアチア語、中国語訳とともに日本語訳も収載される予定である。また、 Mindsでは、一時期、Minds abstractを作っており、websiteで公開されている。

 

(2) 伝統医学・相補代替医療領域のRCTの世界共通の構造化抄録の日本と韓国における発展

構造化抄録を必要な人に届けるプロジェクトは、1991年の “ACP Journal Club” にはじまる。その後、“Evidence-Based Medicine” でも同様のプロジェクトが進行した。

相補代替医療 (Complementary and Alternative Medicine: CAM) 領域では、FACT (Focus on Alternative and Complementary Therapies) が3ヶ月に1回発行の季刊誌として1996年に刊行された。そのうち、鍼の日本語訳のプロジェクトが 2001年に開始され、「医道の日本」誌に順次掲載されるとともに、過去分の1996年からの分についても翻訳がなされ、全50篇の段階で「鍼のエビデンス(医道の日本社)」として書籍化がなされた。その後も日本語訳は続き、「医道の日本」に、毎号、掲載され、通算 150篇となったところで、日本人コメントも含めて増補改訂版が2009年に発行された。

日本においても、EKATをモデルとしていくつかのプロジェクトがなされた。

まず、2009年には、財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 「特別用途食品および栄養療法」調査班(班長: 津谷喜一郎)により、「特別用途食品および栄養療法のエビデンス等 に関する情報の収集整理業務 平成 20 年度報告書 (特別用途食品エビデンスレポート 2008)」 が作成された(http://www.shafuku.jp/healthfood/pdf/report.pdf)。

ついで、2012年には、平成22-23年度厚生労働科学研究 地域医療基盤開発推進研究事業 東アジア伝統医学の有効性・安全性・経済性のシステマティック・レビュー(代表研究者: 津谷喜一郎)において「鍼灸エビデンスレポート 2011」、「あん摩・マッサージ・指圧エビデンスレポート 2011」、「漢方治療の経済評価エビデンスレポート 2011」が作成された。その内容は、以下の如くである。

鍼灸領域では、医中誌Web Ver.4、Cochrane Library (CENTRAL)、津谷・須山による「日本の鍼灸RCTデータベース」(JAC-RCT) 、全日本鍼灸学会のメンバーの作成した鍼臨床試験論文リスト(仮称JSAM-RDB)、さらに一部ハンドサーチを用いたRCT論文の系統的検索の結果から、421 件の論文が得られた。次いで、スクリーニングにより53件の論文が選択基準に合致し、構造化抄録が作成された。作成された構造化抄録は第3者のコメントを加えた上で、「日本鍼灸エビデンスレポート2011 -53のRCT-」(EJAM 2011)としてまとめられ、また、その英語版である“Evidence Reports of Japanese Acupuncture and Moxibustion 2011: 53 Randomized Controlled Trials ” (EJAM 2011) も作成された。

あマ指領域では、医中誌Web Ver. 4を用いてRCT論文を網羅的に収集し、105件のうち、基準に適合した18件(19論文)について構造化抄録が作成され、「あん摩・マッサージ・指圧エビデンスレポート 2011 -18のRCT-」(EAMS 2011)としてまとめられ、その英語版である“Evidence Reports of Anma- Massage-Shiatsu 2011: 18 Randomized Controlled Trials of Japan” (EAMS 2011)も作成されている。

漢方薬の経済評価は、医中誌Web Ver. 5を用いて検索を行い、スクリーニングの後、漢方薬の経済評価と認められる10件の論文を同定し、これらについて構造化抄録が作成され、「漢方治療の経済評価エビデンスレポート (Evidence Report of Economic Evaluation of Kampo Treatment: (EREK)2011) としてまとめられた。

韓国においては、2009年より日本東洋医学会と交流協定書を取り交わしている大韓韓医学会のEBM特別委員会により、2011.7.15に「漢方治療エビデンスレポート 2010 -345のRCT-」(EKAT 2010) の韓国語翻訳版である『 근거중심의 한방처방:임상 근거를 만들고, 전달하며, 사용하는』が 出版された。

続いて、韓国伝統医学に関するエビデンスレポートが、同委員会によりEKATと同じ手法を用いて作成され、2012年1月20日に『근거중심의 한의치료』として出版された。本レポートでは、論文検索は The Cochrane Library (CENTRAL)、PubMed、Korea Institute of Oriental Medicine (KIOM) のデータベース、韓医学関係の17分科会のwebsiteが用いられ、RCT以外のデザインの試験を含む306件の論文(うち RCTは134件)が収集・選択され、ハングルで構造化抄録が作成された。134件のRCTの構造化抄録については、「平成22-23年度厚生労働科学研究 地域医療基盤開発推進研究事業 東アジア伝統医学の有効性・安全性・経済性のシステマティック・レビュー」(代表研究者: 津谷喜一郎)において英訳がおこなわれ、 “Evidence Reports of Korean Medicine Treatment 2010: 132 Randomized Clinical Trials (EKOM 2010)” としてまとめられている。本エビデンスレポートには、77件の鍼灸関係のRCT、27件の植物薬のRCT、1件の両者併用のRCT、27件のその他の韓国伝統医学のRCTから構成されている。

上記のうち、日本の鍼灸 (日本語、英語)、あマ指(日本語、英語)、韓医学 (英語)、漢方治療の経済評価 (日本語)の構造化抄録は、東アジア伝統医学エビデンスレポート(Evidence Reports of Traditional East Asian Medicine : ETEAM) のwebsiteでアクセスでき、検索もできる (http://jhes.umin.ac.jp/team.html)。本websiteには、EKATへのリンクもはられている。

 

(3) CONSORT声明

 RCTを報告する論文の質向上を目指して、CONSORT声明が1996年に公表され、2001年、2010年に改定されている (http://www.consort-statement.org/)。

2010年版は25の項目からなり、論文作成者は、各項目の情報が何ページにあるかを記したチェックリストを付けて投稿するものである。また例数のフローチャートをつけることも要求される。これは解析対象例数によって結果が異なる場合があるためである。これらによってRCT論文の質管理とともに、RCTそのものの質が高まる。なお、日本東洋医学会の投稿規程も、2008年3月改訂版 (日本東洋医学雑誌 2008; 59: 580-89)に「RCT論文の場合は改訂版CONSORT声明 (2001) に準じる」が加えられた。現在は、CONSORT声明 (2010) の使用が求められている。

CONSORT声明のherbal extensionともいえるものが2つ発行されている。

Gagnier JJ, Boon H, Rochon P, Moher D, Barnes J, et al. Reporting randomized controlled trials of herbal interventions: An elaborated CONSORT statement. Annals of Internal Medicine 2006; 144(5): 364-7.(岡部哲郎, 津谷喜一郎訳. ハーブ介入のランダム化比較試験報告: 詳細なCONSORT声明. In: 中山健夫, 津谷喜一郎 (訳). 臨床研究と疫学研究のための国際ルール集 ライフサイエンス出版, 2008. p.156-63)

Bian ZX, Moher D, Dagenais S, Li YP, Wu TX, et al. Improving the quality of randomized controlled trials in Chinese herbal medicine, Part IV: applying a revised CONSORT checklist to measure reporting quality. Journal of Chinese Integrative Medicine (Zhong Xi Yi Jie He Xue Bao)2006; 4(3): 233-42.(津谷喜一郎、荒木里美訳. 中薬のランダム化比較試験の報告に関するCONSORT声明. In: 中山健夫, 津谷喜一郎 (訳).  臨床研究と疫学研究のための国際ルール集 ライフサイエンス出版, 2008. p.164-9)

前者は単味のハーブを、後者は中国の方剤を対象にしたものである。生薬からなるという特性から「介入」についてどう記述すべきかが詳しく書かれている。後者は中国伝統医学の診断体系や臨床経験年数なども考慮されている。

EBM特別委員会第3期 (2009-2012) に漢方コンソルト・タスクフォース (KC-TF) が設立された。そこで、EKAT 2009で構造化抄録を作成した論文に関し、その論文での報告が、CONSORT声明にしたがった記載になっているかどうかに関して調査したところ、報告の質が良いものは少ないことが明らかになった。特に、タイトル/抄録においてRCTであるとの記載がない、試験実施施設と期間の記載がない、漢方製剤のメーカー名や一日投与回数の記載がない、ランダム化の方法と保証の記載がない、エントリー患者数, 割付患者数, 解析患者数が不明確、比較対照群の有害事象が記載されていない、などの不備が多くみられた。今後、漢方のRCTに関しても、CONSORT声明に従った報告が求められる。なお、本件は研究として以下で発表された。

岡部哲郎、新井一郎、津谷喜一郎. エビデンスレポートプロジェクト: アウトラインと漢方RCTの質評価. 第60回日本東洋医学会学術総会 フォーラム「漢方のエビデンスを『つたえる』」, 2009.6.21, 東京. 日本東洋医学雑誌 2009; 60 suppl.: 160.

RCTはCONSORT声明に準じて報告することが推奨されているが、既存のCONSORT声明と、その拡張版では、漢方製剤の介入を正しく表現できないことが判明した。以上の問題を解決し、漢方製剤に精通していなくてもRCT論文の方法欄等に必要な情報を記載できるように、KC-TFと日本漢方生薬製剤協会の協力のもと、2011年8月に国立医薬品食品衛生研究所・生薬部、独立行政法人 医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センターによりKCONSORTのページが英文で公開された (http://plaza.umin.ac.jp/~kconsort/)。本ページは、漢方製剤のRCT論文を書く際、研究に使用した漢方製剤に関する情報を著者が論文中に詳細に記載するのではなく、漢方製剤の詳細情報が収載されている本websiteのアドレスを記載することで代替することを意図したものである。

CONSOR声明はその後、疫学研究、システマティック・レビューなどの多様な研究デザイン、また上記した広く相補代替医療 (complementary and alternative medicine: CAM) などに展開 (extension) した。こうした状況下で、それら全体の、論文作成に当たってのガイドライン (publication guideline) をカバーしアクセス性を高め、また将来のガイドラインの作成をサポートする “Equator Network” が2008年6月に設立された (http://www.equator-network.org)。

このうち主たるものの日本語訳は以下に含まれる。

中山健夫, 津谷喜一郎(編). 臨床研究と疫学研究のための国際ルール集. ライフサイエンス出版、2008

(4) 臨床試験の登録公開

2008年10月修正のヘルシンキ宣言では第19項に「すべての臨床試験は、最初の被験者を募集する前に、一般的にアクセス可能なデータベースに登録されなければならない。」(Every clinical trial must be registered in a publicly accessible database before recruitment of the first subject) が入った。しかしこのことはあまり知られていない。そこでここでは、それまでの歴史的経緯を含めて述べることとする。

臨床試験の登録公開 (clinical trial registry: CTR) は、1990年代に「エビデンスに基づく医療」(evidence-based medicine: EBM) が盛んになり、注目されるようになったものである。特に、1992年にEBMの情報インフラの一翼をなすコクラン共同計画 (The Cochrane Collaboration) が設立され、システマティック・レビュー(SR)が本格的になされるようになり問題がより明らかなった。SRはメタアナリシス (meta analysis: MA) とほぼ同義としてよい。

いかに網羅的な調査を行いstudyを探し、その質を吟味し、高度の統計学的方法を用いて統合しても、実施されたstudyが報告されていなければバイアスが入るという問題がおきる。これは「パブリケーション・バイアス」として知られる。これによって、医療において種々の意思決定を行うもの、すなわち医療従事者、政策決定者、医療消費者などが、間違えた意思決定をなすことになる。無効な治療法、有害な治療法、費用対効果が悪い治療を「つかって」しまうのである。

Table 5に、鍼の分野の例を示す。1966-1995 年の期間でMedlineを検索しabstractつきの論文について結果を調査すると、中国では109編の論文のうち108編、99%が "favor to treatment"、つまり鍼がコントロール群に比較して「効いて」いるのである。イングランドは75%であるが、日本を含めてその他の国も同様である。これは「効かなかった」studyが論文化されていないことを示す、と一般には解釈される。

こうした事態は、システマティック・レビューの研究者間では広く知られていた。このバイアスを避けるため、研究者の倫理に訴える、法制化する、websiteを設定しそこに計画中や進行中の臨床試験を登録する、などいくつかの方法が論じられたが、具体的な方法は充分に確立しなかった。

一方、米国国立保健研究所 (NIH) の国立医学図書館 (NLM) は、1997年のUS-FDA近代化法(FDA Modernization Act)にもとづき、生命を脅かす疾患 (life threatening disease) については、患者の臨床試験に対するアクセスを促進する目的で、2003年に “ClinicalTrials.gov” を設立した (http://clinicaltrials.gov/ct2/info/about)。このシステムはパブリケーション・バイアスを避けるのが主目的ではないが、一部はその機能を持つことになった。ただし、疾患はがん、AIDS、アルツハイマー病などに限られていた。

ところが、2004年6月3日のNew York Timeの1面に掲載された、Glaxo SmithKline社のスキャンダルを契機に世界が動くようになった。小児に対する抗うつ剤の臨床試験で自殺企図の有害事象があったにもかかわらず、それが適正に報告されなかった、というものである。ここで一挙に臨床試験登録を義務づけるべきという論調が世界的に高まった。類似の臨床試験の参加者にとってのリスク、さらには「利他主義」(altruism) にもとづく試験参加者の善意が無視されることなど、生命倫理の問題が顕在化したのである。

2004年9月には医学雑誌編集者国際委員会 (ICMJE) が声明を出し、臨床試験が事前に登録されていなければその原稿を受け付けない、とした(すでに進行中のものは猶予期間が設けられた)。同年10月のコクラン・コロキウムでは「オタワ宣言」がだされた。WHOも動き、翌2005年4月にジュネーブのWHO本部で "WHO Technical Consultation on Clinical Trial Registration Standard Meeting" が開催され、登録すべき20項目などが決められた。

この2004年-2005年の動向は、以下にまとめられている。

(1) 臨床試験の登録と結果の公開 (ポジティブ, ネガティブを含めて. 第25回日本臨床薬理学会年会・シンポジウム12. 2004.9.18, 静岡. 臨床医薬 2005; 21(1): 3-62

(2) 「臨床試験登録に関する「オタワ声明」と「ジュネーブ会議」の動向」. 薬理と治療 2005; 33(6): 543-66
   http://www.lifescience.co.jp/yk/jpt_online/ottawa/index_ottawa.html

(3) UMIN臨床試験登録システム シンポジウム (2005.2.2)
   https://upload.umin.ac.jp/ctr/symposium20050202.htm

日本では、UMIN-CTR(2005.6-)、日本医薬品情報センター (JAPIC) によるJAPIC-CTI(2005.7-)日本医師会治験促進センター (JMACCT) によるもの(2005.12-)の3つのシステムが始まり、さらにそれを串刺しにした国立保健医療科学院のJPRN (2008.10-) も開設された。

WHOは2007年に、世界各国のシステムを串刺し検索できるInternational Clinical Trials Registry Platform (ICTRP,  http://www.who.int/ictrp/en/) を設立し, 検索システムのサイトを開設した ( http://apps.who.int/trialsearch/)。

現在、登録されているものは日本の漢方製剤を含めてここから検索できる。

2007年4月以降の、厚生労働科学研究費補助金のうち、介入を伴う臨床研究については登録が義務付けられた。また2009年4月以降、厚生労働省による「臨床研究に関する倫理指針」でも義務づけられた。

以上、臨床試験登録の趣旨をやや詳しく、歴史的に解説してきた。

ところで、日本でどのくらいのRCTや臨床試験が実施され、そのうちのどういう割合が登録されているのであろうか?

2006年に世界各国の状況などをまとめた書籍では、当時、日本では治験が400件、その他の臨床試験が2,300件、計2,700件実施されたと推計された。

Matsuba H, Kiuchi T, Tsutani K, Uchida E, Ohashi Y. The Japanese perspective on registries and a review of clinical trial process in Japan. In: Foote M ed. Clinical trial registries: A practical guide for sponsors and researchers of medicinal product. Basel: Brikhäuser, 2006

またそこでは、2006年2月時点で3つの登録システムで累計550件が登録されたとしている。日本のシステムは先に述べたように、最も早期に開始されたUMIN-CTRでも2005年6月開始である。そこで、2010年5月時点でそれぞれのシステムから2006年の登録数を見てみると、UMIN-CTRが259件、JAPIC-CTIが138件、JMACCTが7件、計404件であった。すなわち、登録割合は約15% (404/2,700)であった。

おなじく2009年分を見るとそれぞれ1,311件、295件、9件、計1,615件である。臨床試験の年間実施数を先と同じく約2,700件とすると、登録割合は約60% (1,615/2,700)となる。

先に、鍼の領域のパブリケーション・バイアスの1966-1995年の状況を例として示した。では、現在の漢方製剤のパブリケーション・バイアスの状況はどのようなものであろう。

EKAT 2010の全345件について予備的な解析を行ったところ、コントロール群が他の漢方製剤だけの試験を除いた308件の試験のうち、"favoring test treatment"は 301件(98%)という結果であった。先の鍼のパブリケーション・バイアスと同じ状況である。

日本での臨床試験の登録割合は急速に上昇しているが、漢方製剤についても登録がなされ、真の有効性や安全性のエビデンスが明らかになることが望まれる。

なお、世界的には、進行中の臨床試験だけではなく、その結果の公表も義務付ける方向である。NIHによってfundされたものはすでに実施されている。日本で登録された漢方製剤の結果の公表状況は、以下で報告された。

新井 一郎, 津谷 喜一郎. 漢方薬の臨床試験登録と結果の公表状況. 第61回日本東洋医学会学術総会, 2010.6.5, 名古屋. 日本東洋医学雑誌 2010; 61 suppl.: 244.

広くCAMの領域は、このパブリケーション・バイアスが、通常医学 (conventional medicine) よりも大きいとされる。製薬企業がスポンサーとなって行う治験のような行政的枠組みがなく、多くは医師がスポンサーとなり自発的に計画・実施されるものであり、日本を含めての世界の臨床試験登録制度の動向を知らないことが多いためである。

本「エビデンス・レポート」プロジェクトは、日本におけるRCTをコメントつきの構造化抄録にまとめ、多様なユーザーに「つたえる」ことを目的としたものである。そこではバイアスを減少させることを常に念頭において作業がなされている。だが実施されたRCTが論文などで発表されてなければ、そのパブリケーション・バイアスは防ぎようがない。

日本で今後、漢方製剤のRCTを計画・実施しようとされる方が、そのすべてを登録されることが強く期待される。

なお、臨床試験の原データへのアクセスにより、質の担保や二次解析などができるシステムが欧米、また日本においても 2010年代になって始まり、CAMの領域でもなされるべきであると考えている。

(5) The Cochrane Library (CENTRAL)

The Cochrane Library (CENTRAL)はRCTの世界的なデータベースのプラットフォームであるが、EKATに収載されている漢方製剤のRCT論文のうち、CENTRALに収載されているものは、EKAT 2010では345件中67件のみであった。代替医療分野のRCTのCENTRALへの収録はメリーランド大学 統合医療センター (Center for Integrative Medicine, University of Maryland Medical School) が担当していることから、連絡を取り、EKATに収録されているRCT論文を CENTRALに収載できないかの交渉を行った。交渉の結果、EKAT 2010の漢方RCT論文を CENTRALに収載し、そこから、日本東洋医学会の EKATの構造化抄録(英語)にリンクをはることとなり、2011年10月の CENTRAL更新時に EKAT論文の追加収録が行われた。ただし、著作権の関係から、もともと CENTRALに収載されていた漢方製剤のRCT論文からはリンクははられていない。いずれにせよ、世界的なRCTデータベースである The Cochrane Library (CENTRAL)から全ての漢方製剤の RCTにアクセスが可能となった。エビデンスに基づいて診療ガイドラインを作成する場合、CENTRALを用いてRCT論文を検索する場合が多いが、今回のことで、漢方製剤のRCTがみつけやすくなり、診療ガイドライン(clinical practice guidelines: CPG) において漢方製剤がもれなく評価されることが期待される。

なお、上記のことは、下記の論文に詳しい。

Wieland LS, Manheimer E, Sampson M, et al. Bibliometric and content analysis of the Cochrane Complementary Medicine Field specialized register of controlled trials. Systematic Reviews 2013, 2: 51
http://www.systematicreviewsjournal.com/content/2/1/51

 

(5) 診療ガイドライン

伝統薬はすでに国際的な商品となっている。日本の漢方製剤は世界的に見ればこの流れから若干遅れている。中国や韓国などの伝統薬製剤についても質の高い構造化抄録が作成されれば、2005年から2006年にかけてWHO西太平洋地域事務局 (WHO Regional Office for the Western Pacific: WPRO) が作成しようとした伝統医学の診療ガイドライン (Clinical Practice Guideline: CPG) などにおいて議論の混乱を減じることができよう。

Motoo Y, Arai I, Hyodo I, Tsutani K. Current status of Kampo (Japanese herbal) medicines in Japanese clinical practice guidelines. Complementary Therapies in Medicine 2009; 17: 147-54.

元雄良治, 津谷喜一郎.伝統医学のグローバル診療ガイドラインは可能か? 日本東洋医学雑誌 2006; 57 (4) : 465-75.

なお、WHO/WPROの伝統医学 CPG作成プロジェクトは日本などの強い反対により2007年の香港での第5回目の会議で中断された。しかし、その後も、中国では継続して作業が進み、2011年に3巻本として出版された。

中国中医学院編. 中医循証臨床実践指南 - 中医内科. 北京: 中国中医薬出版社, 2011

中国中医学院編. 中医循証臨床実践指南 - 専科専病. 北京: 中国中医薬出版社, 2011

中国中医学院編. 中医循証臨床実践指南 -鍼灸. 北京: 中国中医薬出版社, 2011

上記の経緯と、その内容については下記に詳しい。

柳川俊行, 津谷喜一郎. 中薬の国際化と標準化に関する中国の政策. 第5回 中医診療に関する業界標準と診療ガイドライン. 和漢薬 2013; No.720: 3-10.

 

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