人間の身体は複数の臓器から構成されており、胸腔および腹腔内に存在する臓器を一般に臓腑といいます。臓腑の実質臓器が五臓(肝・心・脾・肺・腎)で、管腔臓器が六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)です。ただし、現代解剖学には三焦に相当する臓器はありません。また、それ以外の臓腑についても、その静止機能は西洋医学よりも広い概念を持っています。なぜなら、江戸時代後期に西洋医学導入時、それまで中心的医療概念である漢方医学の解剖用語を借りて、西洋医学的解剖用語としたからです。なお、膵臓の膵と云う概念や腺と云う概念は、それまでの漢方には無かったので、その時になって作られた文字です。これを国字といいます。
表:五臓の働きとその異常を示唆する症候
五臓 | 機能単位としての五臓の働き | 五臓の異常を示唆する症候 |
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肝 | 1.精神活動の安定化 2.栄養素の代謝と解毒 3.血液の貯蔵と全身への栄養供給 4.骨格筋のトーヌスの維持、運動や平衡の制御 |
1.神経過敏、易怒性、いらいら 2.じん麻疹、黄疸 3.月経異常、貧血 4.頭痛、肩こり、めまい、筋肉の痙攣、腹直筋の攣急 5.季助部の腫れ・痛み |
心 | 1.意識レベルの維持、意識的活動の統括 2.覚醒、睡眠リズムの調節 3.血液の循環 4.熱の産生、汗の分泌、体温の調節 |
1.焦燥感、興奮、集中力低下 2.不眠、嗜眠、浅い眠り、夢が多い 3.動悸、息切れ、徐脈、結代、胸内苦悶 4.発作性の顔面紅潮、熱感 |
脾 | 1.食物の消化・吸収、水穀の気の生成 2.血液を滑らかにし、血管からの漏出防止 3.筋肉の形成と維持 |
1.食欲低下、消化不良、悪心・嘔吐、胃もたれ、腹部膨満感、腹痛、下痢 2.皮下出血 3.脱力感、四肢のだるさ、筋萎縮 4.考え込み、抑うつ |
肺 | 1.呼吸による宗気の摂取、全身の気の流れの統括 2.水穀の気の一部から血と水を生成 3.皮膚の機能の制御、防衛力の保持 |
1.咳嗽、喀痰、喘鳴、鼻汁、呼吸困難、息切れ、胸のふさがった感じ 2.気道粘膜の乾燥 3.発汗異常、かゆみ、かぜをひきやすい 4.憂い、悲しみ |
腎 | 1.成長、発育、生殖能を司る 2.骨、歯牙の形成・維持 3.泌尿能、水分代謝の調節 4.呼吸能の維持 5.思考力、判断力、集中力の維持 |
1.性欲低下、不妊 2.骨の退行性変化、腰痛、歯牙脱落 3.浮腫、夜間尿、目や皮膚の乾燥 4.息切れ 5.健忘、根気がなくなる、恐れ、驚き 6.白内障、耳鳴り |