漢方の診察法は望聞問切の四つの診察法により成り立っています。そのうち、切診は触覚を用いた診察です。切診の代表が脈診と腹診です。脈診は現代医学では脈拍数、緊張度、不整などを認識します。一方漢方では脈の性状から病態を把握します。腹診は江戸時代の医師の経験により我が国で大きく発達し日本漢方では大変重視される所見です。
脈診
- 【浮脈】
- 皮下に血管が浮いているようで、指を軽く当てるだけですぐにはっきりと触れる脈
- 【沈脈】
- 指を軽く当てただけでは拍動を触れず、深く圧迫して初めて触れる脈
- 【実脈】
- 按圧している指を力強く押し返してくる力のある脈
- 【虚脈】
- 按圧している指を力強く押し返してくる力のない脈
腹診
漢方医学の腹診では、患者を仰向けに寝かせて、両足を伸ばさせ、手を両脇に軽く置かせ、腹部に力を入れないようにさせます。そして診察は右手の手掌または指先で行います。
典型的腹診
- 【心下痞硬】
- 鳩尾がつかえるという自覚症状、同部位の抵抗・圧痛
- 【胃内停水】
- 鳩尾の腹壁を軽く叩くとピチャピチャと音がする所見
- 【胸脇苦満】
- 両側もしくは片側の季肋部辺縁を中心に出現
- 【腹皮拘急】
- 腹直筋が過度に緊張した状態
- 【小腹不仁】
- 下腹部が軟弱無力、圧迫すると腹壁が容易に陥没する。
- 【正中芯】
- 腹部正中線上の皮下に索状物を触れる
- 【臍傍圧痛】
- 臍周囲に出現する圧痛・瘀血病態の存在を示唆する。